VISION Adjustable Upper-Arm


これまで散々悩まされていた、車高ダウン時の過大なネガティブキャンバーを補正すべく、調整式のアッパーアームを購入しました。
 『悩むくらいならさっさと購入すればいいのに』
と思われるでしょうが、これまで "どこを見ても車検対応" をモットーとしてきたために、なかなか踏み切ることが出来なかったのです…。
購入までの成り行きは1/8のブログに書いている通りですが、あれこれ考えてはみたものの、どうやってもうまくキャンバーを補正する方法は見つかりませんでした。

さて、この類の調整機構付アームはほとんどのものが車検非対応となっています。
中には強度検討書が付属している製品もありますが、だからといってそのまま車検対応というわけではなく構造変更手続きを行わなければいけません。
このVISIONの製品にはそもそも強度検討書は付属していませんので、心情的にはすっきりしないながら車検時には「純正戻し」をすることにして、購入・装着してみました。

この調整式アームへ交換には、ボールジョイントのテーパー部の勘合を外すためにプーラーが必要となります。
フロントのアッパーアームのように鋳物ですと、Maintenanceに書いている通りハンマーで殴ることで外すこともできるのですが、CL7のリアナックルはアルミ製のためその手は使えません(試したことはないですが、おそらくナックルが割れるでしょう…)。
このプーラーはタイロッドエンドプーラーとしてYahoo!オークションで売られていたもので、2400円でした。
中国製ながら造りは悪くなく、問題なく使用できました。

この中央のアームを交換してやることになります。
ここ以外のアームはどれも簡単ですが、ここだけボールジョイントがあったりサブフレームの上の狭い場所にあったりと、手間が掛かる上に作業性もよろしくありません。

といっても基本的にはボルトを緩めるだけです。
邪魔になるブレーキパイプクランプやステーを取り外し、ボルトを緩め取り外します。

そして問題のボールジョイント部分です。
まずはABSセンサーのクランプを外し、回り止めのピンを抜き、キャッスルナットと呼ばれるナットを外します。

そしてタイロッドエンドプーラーをこのように掛け、プーラーのボルトを締めていくと…
「パキッ」という音と共に、勘合が外れてくれます。
プーラーは見ての通りボルトを締めこんでいくと口が閉じる構造で、上側にナックルが、下側に取り外したいボルトが接触することになります。

なおプーラーのボルト部分にはグリスを、ボールジョイントのブーツに触れる部分にはシリコンスプレーを吹いておくと作業性が向上します。

取り外した純正アームとの比較。
このVISIONのアームは強化ブッシュになっており、微妙に形状が異なります。
なお、CL7純正アームの全長は約275mmでした。

装着前にVISIONのアームの調整を一杯まで伸ばし、取り外してみました。
ロックナットは最大まで緩めています。
なぜこんなことをするかと言うと…

有効ネジ山数を調べておくためです。
車高調にしてもそうですが、どこまでなら伸ばせるかは予め調べておくべきです。
『ちょうどよいくらいに調整した』と思っていても、ネジが1山・2山しか掛かっていないようだと大変なことになってしまいますから…。
このアームの場合、ざっとですが33mmといったところでした。
したがってアームを伸ばしていくときは、ネジ山の露出部分が25mm以下であれば安心できそうです。
この後、ネジ山部分にはTEINのラストプルーフを吹いて純正同等と長さに仮調整しておきました。

実は後日の作業になったのですが、ブッシュ部分はこのように分解できます。
構造はアームを二分割のブッシュで挟み、ブッシュの中心にカラーが入っているというものです。
このアーム、純正アームとは異なりブッシュ部分が自在に回転してくれますが(そのため締め付け時に1Gを掛ける必要がありません)メーカーの想定とは異なり、カラー〜ブッシュ間だけでなく、ブッシュ〜アーム間も摺動します。
そのために異音が発生することもありますので(私の場合、そのまま組むと異音が発生しました)付属のグリス(かなり粘度が高い)を組み付け前にしっかり塗っておくとよさそうです。

このように、外側であるアームとの接触部分と内側であるカラーとの接触部分、そしてアーム側にもカラーにもしっかりとグリスを塗布しておきます。

そして元の通りに組み付けます。
上にも書いていますが、純正アームのように1Gを掛けて締める必要はありません。
ブレーキパイプのクランプも忘れずに。

キャッスルナットはアームにも付属していますが、どうみても純正ナットのほうがよさそうなのでこちらを再使用することにしました。
このナットを締めたあとは回り止めのピン(割りピンが付属しています)を通しますが、純正では割りピン用の穴が2ヶ所あるところ、このアームには1ヶ所しかありません。
この穴がいい位置になるようにナットを締めていくわけですが、このとき決して緩め方向に回して位置を合わせることのないようにします。
写真でもおわかりのように、ネジ山下部がテーパー状になっていますが、相手側(ナックル側)も同形状になっているためナットを締めていくと食い込むようにしっかりと固定されるわけです(ゆえにナットを緩めただけでは抜くことができず、プーラーが必要となります)。

装着完了。
プーラーと基本的な工具さえあれば、難しい作業ではありません。

装着してキャンバーを調整してやると、余裕だったはずのホイールオフセットがそうでもなくなってしまいます(キャンバーの測定は、Maintenanceを参照してください)。

しかし、車両の個体差で右に比べると左はまだまだ余裕があります(写真ではわかりづらいですが…)。

リアフェンダーから錘をつけた糸を垂らし、センターキャップまでの距離を測ると右側では約30mmでした。

それに対して左側は約36mmとなっています。
これがいわゆる「個体差」になるわけですが、あまり気持ちのいいものではないため、サブフレームの位置をずらしてやることにしました。

CL7に限らず、リアサスペンションはサブフレームに取り付けられており、そのサブフレームはモノコックボディにこうして締結されています。
この写真はリア右タイヤを外して、下側から前方を写したところで、左下にあるのがサイドブレーキワイヤーです。

こちらはリア右タイヤを外して後方の、スタビライザーブラケット付近を下側から写したところです。
片側2本、計4本のボルトを軽く緩め、サブフレームが移動するようボディとの間に棒などを入れ、こじってやります。
固く締まっているはずのボルトは意外と緩く、軽くこじるだけであっけなくサブフレームは動きました。
作業はもちろんジャッキアップした後、ウマをきちんと掛けてから行います。

わかりにくいですが、位置をずらした後の写真です。
ボルト下側にホコリのついていない部分があるのがおわかりでしょうか。
たったの2〜3mm程度ですが、この分だけサブフレームの位置が変わったということになります。

いくらかは余分な(というか一般的ではない)作業も含まれていますが、普通にアーム交換を行うだけならあっけなく終わる作業です。
一応簡単にはアライメントを調整しましたが、正確にはきちんとしたテスターで測定・調整を行う必要があります。
サブフレームの位置調整については、個体差(左右差)に悩まされる場合はやってみるとよいかもしれません。
この度はリアでしたが、フロントも同様に調整することができます。

取り付け後の感想ですが…正確なアライメント調整をしていないのではっきりは言えませんが、ステア操作に対する応答が穏やかになったように思えます。
これまでがひどかったわけではありませんが、曲がりすぎることなく、曲がらないこともなく自然に…と言った感じです。
直進性は若干向上したようで、路面変化に対しては安定するようになりました。
ネガティブキャンバーが減少することによりリアタイヤの限界が下がっている可能性もありますが、街乗り程度の速度域ではそれも不明です。

製品としてはブッシュが強化されているためか乗り心地は少々悪化し、グリスを塗布するまでは時折異音が発生していました。
ただ、目的は十分に果たしていると言うことはできます。
車検対応ではありませんのでお勧めしづらいパーツではありますが…個人的にはまずまず満足です。

メーカー VISION
品名 Adjustable Upper-Arm
品番 -
スペック -
購入先 Yahoo!オークション
装着日 2008.2.3